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ポーギーとべス [オペラ]

米国のポピュラー音楽とクラッシック音楽両面で活躍し、「アメリカ音楽」を
作り上げた作曲家と評価されているジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin、1898-1937)が
1934年から1935年にかけて作曲したオペラ「ポーギーとべス
”Porgy and Bess”(全3幕・9場)についてです。。。

ガーシュウィンは1924年、25歳の時にジャズとクラシックを融合させた
「ラプソディ・イン・ブルー」”Rhapsody in Blue”を発表し、この曲が世界的に
ヒットし、作曲家として不動の地位を築きました。
Rhapsody_in_Blue Clarinet opening.png
       ラプソディ・イン・ブルーの クラリネット オープニング

オペラ「ポーギーとべス」はデュボーズ・ヘイワードDuBose Heywardが
1925年に書いたベストセラー小説『ポーギー』をベースにしたもので、構想から
約10年を経て作曲され、黒人だけが出演する(但し、白人警官役だけは白人)
異色のオペラとして1935年にボストンで初演されました。

台本はデューボーズ・ヘイワード(原作者)とその妻で脚本家のドロシー夫人
Dorothy Heywardそしてアイラ・ガーシュインIra Gershwin(ガ-シュインの兄で詩人)の
3人の共同作成によるものです。



ガーシュインは、特に人種差別の激しかったアメリカ南部の黒人スラム街の貧困と喧騒、
麻薬と殺人、宗教と習慣、そうした生活の中で育まれる人間愛を題材として、
黒人霊歌より派生したゴスペルやジャズの要素をふんだんに導入し、このオペラを作曲しました。
尚、ガーシュイン自身は米国籍の白人です(父親はロシア系ユダヤ人で米国への移住者)。

しかし「ポーギーとベス」の初演は、評価はわかれたものの興行的には
成功とは言えませんでした。

初演の2年後にガーシュインは38歳の若さで亡くなりましたが、彼の死後、
第二次世界大戦を経て、このオペラが高く評価される様になったのです。

DSC01543.JPG



さて、舞台は1920年代のアメリカ南部サウスカロライナ州チャールストンにある
河岸の黒人スラム街キャットフィッシュ・ロウCatfish Row(なまず長屋)。


第一幕

黒人の漁師ジェイクの若い妻クララが生まれたばかりの赤ん坊を抱いて
ブルース調の子守唄、「サマータイム」”Summertime”を歌う。

「夏にゃ暮らしも楽になる。魚は跳ねて、綿花は育つ。父さんは金持ち、
母さんはきれい。良い子だから、泣くのはおよし。。。ある朝、お前は立ち上がって歌う、
それから翼を広げて飛んでいく。。。」

他方、男達はサイコロ賭博(クラップス)に興じている。
クラウンCrownが情婦のべスBessをつれて賭博に加わるがロビンズRobinsと
口論となりクラウンはロビンズを殺してしまう。

べスはクラウンが逃走した後、片足が不自由で常に杖をついているポーギーPorgyの家に
転がり込む。

弔問の客が集まりロビンズを弔う合唱が始まる。。。

第二幕
ポーギーとべスは同棲を始め、二重唱「べス、お前は俺の女だ」”
Bess、you is my woman now..." を歌う。

ある日ポーギーの勧めでべスは近所の人たちと一緒にキティワ島にピクニックに行き、
島に隠れていたクラウンに出会う。結局べスは数日後ポーギーのもとに帰る。

嵐の夜、クラウンが島からスラムに戻ってくる。

漁師ジェイクの船が嵐に遭遇して行方不明となる。クララはジェイクを探しに出かけるが
クララも死んでしまう。

「サマータイム」はジェイクが行方不明になった嵐の夜、赤ん坊を抱いたクララによって歌われます。。
またクララが嵐で死んだ直後にもたった一人残された赤ん坊を抱いた
べスによって歌われます(第三幕冒頭)が、なんとも悲壮な歌へと変化して行きます。


第三幕
ポーギーの家に忍び込んだクラウンは争いとなり結局ポーギーに殺される。
ポーギーが警察に連行され、1週間後に長屋に戻ってくるとべスが寂しさと
麻薬の誘惑に負け、麻薬密売人のスポーティング・ライフSporting Lifeと共に
ニューヨークに行ってしまったことを知る。

ポーギーは最愛のべスを追ってニューヨークの方角へ不自由な片足を引きずりながら
歩いて行くのであった。(幕)

ニューヨークまでは約1,500Kmもの距離があるのに、ポーギーはどうやって
そこまで行くのであろうか?またそれだけの距離があることをわかっているのだろうか?
悲惨なスラム生活の中に見つけた幸せ、その幸せを与えてくれたべスを追って
一途に歩んで行くポーギーの姿がありました。。。



では、第一幕のサマータイムを聴きましょう。。。
クララClara役はポーラ・イングラムPaula Ingram
但し声はハロリン・ブラックウェルHarolyn Blackwell
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団The London Philharmonic
指揮:サイモン・ラトルSimon Rattle
グラインドボーン合唱団The Glyndebourne Chorus



CLARA................................................................クララ

Summertime,....................................................夏には、
And the livin' is easy..........................................暮らしも楽になるさ
Fish are jumpin'.................................................魚は飛び跳ね
And the cotton is high........................................綿花は大きく育ち
Your daddy's rich...............................................おまえの父さんはお金持ち
And your mamma's good lookin'.............................母さんは綺麗
So hush little baby.............................................良い子だから
Don't you cry.....................................................泣くのはおやめ

One of these mornings.......................................いつの日かの朝
You're going to rise up singing............................おまえは立ち上がって歌うんだろうね
Then you'll spread your wings.............................それからおまえは翼を広げて
And you'll take to the sky...................................空に向かって飛び立って行くんだろうね
But till that morning...........................................だけどその日の朝までは
There's a'nothing can harm you...........................何の心配も要らないんだよ
With daddy and mamma standing by......................父さんと母さんが守ってあげるからさ



次は第二幕のポーギーとべスの二重唱「べス、お前は俺の女だ」
”Bess、you is my woman now..."
を聴きましょう。。。
尚、歌詞は当時の黒人スラム英語が使われています。

Porgy:Willard White
Bess : Cynthia Haymon


PORGY.......................................................................ポーギー
Bess, you is my woman now,.....................................ベス、お前は俺の女さ、
You is, you is!..........................................................そうさ、おれの女さ!
An you mus laugh an sing an dance...........................お前は笑って、歌って、踊るのさ
For two instead of one..............................................一人だけじゃないぜ 二人の為だぜ
Want no wrinkle on yo brow,.....................................眉間にしわを寄せるなよ
Nohow,...................................................................決して
Because de sorrow of de past is all done done...........昔の悲しみは全部消えちまったんだからよ
Oh, bess, my bess!.................................................おォ、べス、俺のベス!

BESS.......................................................................ベス
Porgy, is yo woman now,...........................................ポーギー、あたしはあんたの女、
I is, I is!....................................................................そうさ、あんたのものさ!
An I aint never goin nowhere less you shares de fun.........喜びを分かち合える限りあたしはどこにも行かないよ
Deres no wrinkle on my brow,.....................................眉間に皺なぞ寄せないさ、
Nohow,......................................................................決して、
But I aint goin! you hear me sayin,.................................あたしはどこにも行かないさ、わかるだろ、
If you ain goin, wid you Im stayin!.............あんたがどこにも行かない限り、あたしはあんたと一緒にいるよ!
Porgy, is yo woman now!................................................ポーギー、あたしはあんたの女!
Is yours forever -............................................................ずっとあんたのものさ
Mornin time an evenin time an..........................................朝も、夜も、
Summer time an winter time............................................夏も、冬も。

PORGY............................................................................ポーギー
Mornin time an evenin time an.............................................朝も、夜も、
Summer time an winter time................................................夏も、冬も
Bess, you got yo man......................................................ベス、おまえにはおまえの男がいるぜ

Bess, you is my woman now and forever.............................ベス、おまえは俺の女、いまもこれからも
Dis life is jes begun,..........................................................この生活は始まったばかりさ、
Bess, we two is one..........................................................べス、俺たちゃ二人で一人さ
Now an forever..................................................................今も、これからも
Oh, bess, dont min dose women.........................................おォ、べス、あの女達は気にするなよ
You got yo porgy...............................................................お前はお前のポーギーがいるのさ
I knows you means it,........................................................俺にはお前のその思いがわかるのさ
I seen it in yo eyes, bess.............................................お前の瞳でお前の思いがわかるのさ、べス。
Well go swingin...........................................................俺たちゃうまくやっていこうぜ
Through de years a-singin.................................................歌いながら何年も。

BESS.................................................................................ベス
Mornin time an evenin time an.............................................朝も、夜も
Summer time an winter time...............................................夏も、冬も。
PORGY.............................................................................ポーギー
Mornin time an evenin time an.............................................朝も、夜も
Summer time an winter time................................................夏も、冬も。

BESS................................................................................べス
Oh, my porgy, my man, porgy...........................................おォ、あたしのポーギー、あたしの男、ポーギー

PORGY..............................................................................ポーギー
my bess, my bess...............................................................俺のべス、俺のべス

BESS..................................................................................ベス
from dis minute Im tellin you, I keep dis vow: porgy, is yo..........今ここで、約束するわ:ポーギー、あたしは
Woman now..........................................................................あんたの女。

PORGY.................................................................................ポーギー         
From dis minute Im tellin you, I keep dis vow:..........................今ここで、約束するぜ:
Oh, my bessie, wes happy now. we is one now.........................おォ、俺のベッシー、俺たちゃ幸せだぜ。俺たちゃ今、ひとつだぜ。




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コメント 11

塩

ラプソディ・イン・ブルーの冒頭のクラリネットソロは有名ですし、聴いた人の頭に残っているでしょうね。私はこの部分の譜面初めて見せていただきました。
by (2009-07-24 09:20) 

アマデウス

Dr.塩!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ガーシュウィンの作曲家としてのデビュー曲は"Swanee"がありますね。
by アマデウス (2009-07-24 13:20) 

塩

Swaneeも周知の曲ですね。
アマデウス様のブログ拝見できて嬉しいです。・・私も音楽好きの1人です。

by (2009-07-24 16:44) 

アマデウス

Dr.塩!
嬉しい再コメントありがとうございます!
ガーシュウィンはご承知の通りピアニストでもあったわけですが、ここで彼自身のピアノ演奏が聴けます;

①Rhapsody in Blue:http://www.youtube.com/watch?v=8QxWxsK8_3s&feature=related

②Swanee:http://www.youtube.com/watch?v=rsAokRY0ADQ

by アマデウス (2009-07-24 22:19) 

nekotaro

Rhapsody in Blue=のだめ
と、思ってしまう私。
もっとこのblogで勉強させて頂きます!!
by nekotaro (2009-07-24 23:31) 

アヨアン・イゴカー

昔はガーシュイン好きでもなかったのですが、最近は大好きです。哀調があり、彼独特の音があり、個性的です。
やはり、個性がなければ、芸術作品ではないと思います。
by アヨアン・イゴカー (2009-07-25 01:45) 

Cecilia

「ポーギーとベス」、サマータイムを単独で聴くことが多く、オペラとして観たことがほとんどありません。
一度観たのも演奏会形式に近いものだったような気が・・・。
上の映像、なかなかいいですね。
サマータイム、好みの歌い方です。
私はBarbara Hendricksのサマータイムが気に入っています。
by Cecilia (2009-07-25 06:23) 

アマデウス

nekotaroさん!こんにちは~☆
コメント有難うございます!
またまた勉強だなんて。。。。。。(//∇//)テレテレ
nekotaroさんもジャズがお好きな様ですね~☆
by アマデウス (2009-07-25 10:07) 

アマデウス

アヨアン・イゴカーさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
音楽に対する好みも年齢を重ねると共に変わってきますね。
芸術作品には人に感動を与える個性があるということなのでしょうね。

by アマデウス (2009-07-25 11:37) 

アマデウス

Ceciliaさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
☆ガーシュウィンはご承知の通り、「ポーギーとベス」より、「2台のピアノのための幻想曲」や「キャットフィッシュ・ロウ交響組曲」などを出していますのでご覧になった演奏会形式というのはうなずけます。
☆Barbara Hendricksのサマータイム聴いてみたいです。

by アマデウス (2009-07-25 11:47) 

akiko

ご訪問&niceいただき、ありがとうございました^^
by akiko (2009-07-29 11:28) 

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