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モーツァルトと小鳥たち [モーツァルト]

モーツァルトは幼少の頃から小鳥や犬、猫などの動物が大好きであった。
犬はザルツブルク時代にも(最初の犬はフォックステリア)、ウィーン時代にもペットにしており
35年の生涯で3匹の犬を飼っている。

ザルツブルク時代、14歳~21歳の頃とウィーン時代で30~35歳の頃にカナリアを飼っており、
カナリアのさえずりを旋律にしている。

1791年1月29日に6つのドイツ舞曲(6 Deutsche Tänze)K.600を作曲したがこの内第5曲
ト長調ではフルートとヴァイオリンの軽快なトリルでカナリアのさえずりを表現した。

1784年5月27日、当時28歳のモーツァルトは一羽のムクドリを34クロイツァーで購入したと
出納帳に記載している。出納帳には購入に先立つ4月12日にモーツァルトが作曲した
「クラビーア協奏曲(第17番)ト長調」(K.453)第三楽章主題も記載されており、
"Vogel Stahrl 34 Kr.(椋鳥 34クロイツァー) ... Das war schön!(お見事!)
と付記されている。

★モーツァルトが採譜したムクドリのさえずりは第三楽章の主題と比べると多少異なるが(♯一個所間違えて歌っていた)、
「お見事!」であることには違いない。

ムクドリにはドイツ語で「ナフ」"Narr"(道化師)という名前がつけられ、その後約3年間
第三楽章の主題をさえずり続けたという。

★”Narr"には「愚人」という意味と「宮廷お抱えの道化師」の意味があり、モーツァルトは「道化師」という意味で
名前をつけた。英語の「ジェスター」”Jester"のことである。

モーツァルトはムクドリを購入する前に、ムクドリのいる鑑賞用の鳥の売買を商売にしている
者の家(店)にしばしば立ち寄り、口笛で第三楽章の主題を教えたのであろう。

★口笛ではなくリコーダーを使ったかも知れない。リコーダー英: recorderはエアーリード(無簧)の木管楽器(縦笛)
ドイツ語名:ブロックフレーテ”Blockflöte”

モーツァルトとムクドリ屋との会話を再現すると。。。(フィクションです)

ムクドリ屋:モーツァルトさん!このムクドリは若いからすぐに覚えますよ。モーツァルトさんの曲を
       さえずる様に仕込んで見ては。。。うまくさえずることが出来たらお買い求め頂ければ。。。

モーツァルト:わかった。これからしばらく立ち寄って仕込んでみよう。。。(口笛で主題を吹く)


1787年6月4日、この椋鳥が死んだとき、モーツァルトは鳥を埋葬し、後述するユーモアを交えた
一遍の哀悼詩を捧げるのである。心やさしいモーツァルトの性格の片鱗がうかがえる。

ムクドリが死んでから約4年後の1791年にモーツァルトはジングシュピール≪魔笛
” Die Zauberflöte”K.620を作曲することになるが、それに登場する鳥刺し 「パパゲーノ」が
笛を吹いて鳥を呼び寄せる仕草をしながら歌うアリアでは、可愛がっていたムクドリを
思い出したに違いない。

★パパゲーノのアリア:「俺は鳥刺し」 ”Der Vogelfänger bin ich ja”

ムクドリについて;

★日本を含む東アジアに生息するムクドリは:学名Sturnus cineraceus、スズメ目
ムクドリ科、英名は White-cheeked Starling または Gray Starling(左側画像)。
★モーツァルトがペットとして飼ったムクドリは近縁の欧米に生息するホシムクドリ(星椋鳥):
学名:Sturnus vulgaris、スズメ目ムクドリ科、英名:Common Starling(右側画像)。



DSC01063.JPG        Common_starling_in_london.jpg
ムクドリ                                         ホシムクドリ




死んだムクドリを悼むモーツァルトの詩 (ウィーン、1787年6月4日)

★原文ドイツ語では”Hier ruht ein lieber Narr"で始まっており、”Narr”とよびかけていることより
”Narr”がムクドリの名前であることがわかる。

            ここに眠るいとしの道化、
            一羽のムクドリ。
            いまだ盛りの歳ながら
            味わうは 死のつらい苦しみ。
            その死を思うと この胸はいたむ。
            おお読者よ!きみもまた
            流したまえ一筋の涙を。
            憎めないやつだった。
            ちょいと陽気なお喋り屋。
            ときにはふざけるいたずら者。
            でも阿呆鳥じゃなかったね。
            いまごろあいつは天国で、
            ぼくを讃えているだろう、
            無償なる友情の詩を。
            突如血を吐き 召された時に、
            まさか主人がこんなにも
            見事な韻文詩人だと
            ついぞ思ってもみなかった。
            1787年6月4日 モーツァルト
                    

クラビーア協奏曲第17番ト長調K.453は1784年4月12日ウィーンで、優秀な愛弟子
バルバラ・プロイヤーBarbara Ployer嬢の為に作曲され、同年6月13日同嬢によって
初演された。これについてはモーツァルトが父レオポルトに宛てた6月12日付書簡に
次の通り記している。

。。。あす、郊外のデーブリングにある宮廷連絡官プロイヤー氏邸で、演奏会が開かれます。
そこでバペッテ嬢(1)が、彼女のために書かれた新しいト長調の協奏曲(2)を演奏します。
ぼくは五重奏曲(3)です。そして、二人でそのあとに、二台のクラヴィーアのための
大ソナタ(4)演奏します。。。
(ウィーン、1784年6月12日、ザルツブルクの父レオポルト宛書簡。    モーツァルト書簡全集)

★(1)=バルバラ・プロイヤー嬢のこと、(2)=K.453、(3)=K.452 (4)=K.448



クラビーア協奏曲第17番ト長調K.453第三楽章
ピアノ演奏:デジュ・ラーンキ Dezsö Ránki
イギリス室内管弦楽団 English Chamber Orchestra
指揮:ジェフリー・テイトJeffrey Tate

演奏時間:07'54”



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猫とモーツァルト
ピアノ・ソナタ(第13番)変ロ長調 と動物たち
犬といっしょ
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kjisland

今では、モーツアルトと言えば、大きな会場の
オーケストラがそれだと思ってしまいます。
しかし、モーツアルトが創った時にはそんな
個別な状況で作られ、演奏されていたという
絵歩ソードとのギャップを自分の中でどうう
めたらいいのか、考えてしまいます。
あれ、何がいいたかったのだろうか?
意味不明???すみません。
by kjisland (2010-02-25 07:52) 

kontenten

ムクドリが家の戸袋の中に巣を作って、小鳥がピーピー鳴いていた事を
思い出してしまいました。
日本では、それ程愛玩されないような印象ですが・・・
西洋では、可愛がってもらえたようですね。
それも、モーツァルトさんに可愛がれ悼んでもらったムクドリ
世界で一番幸せなムクドリのような気がします。
by kontenten (2010-02-25 09:27) 

まっちゃん

ホシムクドリってすごいですね〜、こんなのが居たらもっと
真剣にムクドリを追いかけてしまいます。
by まっちゃん (2010-02-25 12:56) 

Ariel

なるほど....、<魔笛>には鳥関係のものがでてきますね〜。自然の中を走り抜けてゆく....そんな感じがするピアノソナタは多いです。いつかアマデウスさんにK.333の解説をお願いしたいです。よろしくね。
by Ariel (2010-02-25 15:40) 

まるまる

知り合いが飼っていたムクドリは、言葉をしゃべるようになってました。
by まるまる (2010-02-25 19:16) 

バロックが好き

今晩は、はじめまして♪
「モーツァルトと小鳥たち」ってタイトルに惹かれて
まるまるさんの所から来ました。
とても勉強になりました^^v。
by バロックが好き (2010-02-25 21:23) 

Mineosaurus

ラーンキはたしかコチシュの後輩としてデビューしたハンガリーのピアニストでしたね。
リリカルな演奏です。椋鳥系は九官鳥と同じように声色も似るんですよね。オウム系とは違って地声ではないんですね。たぶんモーツァルトの吹く口笛そのものだったことでしょうね。
by Mineosaurus (2010-02-25 22:07) 

アマデウス

kjislandさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
モーツァルトの音楽が作曲された背景や状況を知ると、こんな状況下で良くこれ程明るい曲が作れたものだと感心したりします☆音楽の閃きが生じると頭の中で、旋律が流れ葛藤も苦悶もせずに音楽が迸り出たようです☆
やはり神童・天才のなせる業なのでしょうね☆
by アマデウス (2010-02-26 08:13) 

アマデウス

kontentenさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ムクドリの雛がいたのですね☆雛の時から歌を教えれば今頃マスコミに引っ張りだこだったかも。。。ムクドリは野鳥だから飼うことは野鳥保護法で規制されているのでしょうね (≧ー≦)
by アマデウス (2010-02-26 08:30) 

アマデウス

まっちゃんさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
日本でもムクドリの群れにまじってホシムクドリがみつかることが
あるそうですよ☆みつかると良いですね☆⌒Y⌒
by アマデウス (2010-02-26 08:45) 

アマデウス

Arielさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
変ロ長調のソナタ、K.333、流麗にして華麗素晴らしい旋律ですよね☆
この曲を聴くと秋空の下、牧場で戯れる羊、山羊、馬、犬などの動物たちを
思い出すんですよ☆♬♩♫♪(´∀`)♪♫♩♬☆
by アマデウス (2010-02-26 22:03) 

アマデウス

まるまるさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ムクドリは結構早く覚えるそうですね☆
ムクドリを飼って自分の好きな旋律を歌える様に
してみたいですね☆♪(゚▽^)ノ⌒☆
by アマデウス (2010-02-26 22:10) 

アマデウス

バロックが好き さん!こんにちは~☆
ご訪問、コメントありがとうございます!
そちらにも後ほどおじゃまさせて頂きます☆
これからも宜しくお願い致します☆
by アマデウス (2010-02-26 22:15) 

アマデウス

Mineosaurus さん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ご指摘の通りラーンキとコチシュともう一人(失念)のピアニストでハンガリー三羽烏とか呼ばれていた様ですね☆
モーツァルトが「お見事でした!」と記入していることと、Mineosaurusさんのコメントが合致し、モーツァルトの椋鳥はモーツァルトの吹く口笛そのもので歌ったことが確認出来てとても嬉しいです☆♪ ヽ( ´¬`)ノ ♪☆
by アマデウス (2010-02-26 22:31) 

黄昏の線路

モーツァルトとムクドリのエピソード、興味深く拝見させて頂きました。
なるほど。詩に、モーツァルトの性格が現れていること、良く分かりましたよ!とても可愛がっていらっしゃった様子が思い浮かぶような気がします。
by 黄昏の線路 (2010-02-28 21:28) 

アマデウス

黄昏の線路さん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
こういうエピソードも含めた無数の書簡や記録が残されておりモーツァルトの
性格や行動が相当詳細に把握出来るのですよね☆いまだに(といっても約1.5年前のことですが)モーツァルトの未発表の楽曲の自筆の譜面が発見され演奏されるのは嬉しい驚きでもあります☆
by アマデウス (2010-02-28 23:20) 

Cecilia

モーツァルトと鳥・・・ということで真っ先に思い出したのがこの歌です。
http://www.youtube.com/watch?v=3jYrR6EuQwY
曲は知っていましたが歌詞の内容はたった今知りました。

by Cecilia (2010-03-01 15:37) 

アマデウス

Ceciliaさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
さすがですね☆Cecilia さんが現存する最古の劇場(@Vicenza)「オリンピコ劇場」でのLiveで収録した「鳥たちよ」”Oiseaux" K.307(ピアノ:Jean-Yves Thaibaudet)じゃないですか!実はCecilia BartoliのこのDVD持っています☆「春への憧れ」K.596や「春 "Der Frühling"」K.597でも小鳥が登場したと思うのですが。。。調べてみます☆尚、モーツァルト一家はザルツブルクではカナリアの他シジュウガカラや鳩なども飼っていた様です☆



by アマデウス (2010-03-01 22:15) 

モッズパンツ

ムクドリにさえずらせたなんて、スゴイですねー。w
みんな驚いて喜びますね。素晴らしい。w


        この子達にも口笛でモーツァルトの曲をレッスンするお

        宮廷の人気者にするお
     _,,,
    _/::o・ァ     
  ∈ミ;;∧,ノ∧    ,,,,,   ,,,,,
    ( ´・ω・) ,,,,(o・e・),(。・e・),,  アマデウスサン、サンジノオヤツ、マダー
     /ヽ○==(。・e・)(。・e・)(o・e・)
    /  ||_彡,,, ノ彡,,, ノ彡,,, ノ
    し' ̄(_)) ̄ ̄ ̄(_)) ̄(_))  ガラガラ
by モッズパンツ (2010-03-01 23:56) 

アマデウス

モッズパンツさん!こんにちは~☆
またまた楽しいAAコメントありがとうございます!
宮廷の人気者になりますよ☆( /^ω^)/♪☆
by アマデウス (2010-03-02 06:49) 

pegasas

こんにちわ。モーツアルトがムクドリを飼っていたなんて
知りませんでした。ムクドリはちょっとスズメより大きい感じで
すね。唄を覚えるのなら、私が教えるときっと演歌ですね(笑)
by pegasas (2010-03-03 17:34) 

アマデウス

pegasasさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
このムクドリ(画像左)は皇居外苑のクロマツ林にいたムクドリなんですよ☆
「ムクドリ歌謡大会」が開催されれば楽しいですね☆♪(^∇^)♪☆
by アマデウス (2010-03-03 20:38) 

LittleMy

ムクドリの雛が落下してきたので、しばらく育てていたことがありました。
モーツァルトさんの時代に飼われていたなんて!
いろんなことがわかって、本当に嬉しいです☆

「魔笛」は、クナーベとダーメをしました♪
by LittleMy (2010-03-09 08:18) 

アマデウス

LittleMyさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ムクドリを育てられたことがあるのですね☆歌を教えていたらデュオができたかも。。。☆
豊かなレパートリーですね!さぞや可憐なKnabeと清楚なDameでしょうね☆
by アマデウス (2010-03-09 12:37) 

Nyandam

モーツアルトの生き物に対する優しい視線が感じられていいお話ですね。

by Nyandam (2010-03-18 14:52) 

アマデウス

Nyandamさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
本文には書きませんでしたが、モーツァルトは友人を自宅に招いてムクドリの
葬儀を行った上で庭に埋葬し、哀悼詩を捧げたそうです☆その光景が目に浮かんできます☆
by アマデウス (2010-03-19 06:58) 

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