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モーツァルトの西方大旅行③(ロンドン②) [モーツァルト]

モーツァルト(当時8~9歳)が家族全員でロンドンに滞在していた頃も約5年前に没したヘンデルの人気は
高く、モーツァルトの演奏会でもヘンデルの曲をその演目に加えているのである。

★ヘンデルの曲:オペラ「アチスとガラテア(Acis and Galatea) 」とオラトリオ「アレクサンダーの饗宴(Alexander's feast)」よりの合唱曲。
★ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル:Georg Friedrich Händel 1685年2月23日 - 1759年4月14日、ドイツ生まれで
イギリスに帰化した作曲家(イギリスに帰化していることから、英語名 George Frideric Handel に従い
ジョージ・フリデリク・ハンドル(ハンデル) とも呼ぶ。大バッハと並ぶバロック音楽最大の作曲家。

当時ロンドンで活躍していた音楽家には既述(弊記事ロンドン①)ヨハン・クリスティアン・バッハ
他にカール・フリードリヒ・アーベルがいた。二人共ドイツ生まれであるが、音楽の新天地を求めて
ロンドンに移り住んでいた。 

二人は1765年1月23日、ソーホー・スクエアのカーライルハウスで「バッハ=アーベル・コンサート
と呼ばれる公開演奏会を開始し、以後1781年まで定期的に演奏会を催し、人気を博した。

★カール・フリードリヒ・アーベル:Carl Friedrich Abel, 1723年12月22日 - 1787年6月20日、ドイツの古典派音楽の作曲家。
ヴィオラ・ダ・ガンバの音楽史上最後の名手であり、そのための貴重な音楽を作曲した。

モーツァルトはアーベルとバッハ両者と極めて親しくなり両者の新作交響曲を聴く機会に
恵まれたのである。


                   
Abel_Gainsborough_1777.jpg     Johann_Christian_Bach.jpg          
カール・フリードリヒ・アーベル  1777                   ヨハン・クリスティアン・バッハ  1776 
(持っている楽器はヴィオラ・ダ・ガンバ)                      ボローニャ国際博物館&音楽図書館蔵
ハンティントン・ライブラリー蔵(サンマリノ、カリフォルニア)




モーツァルトはロンドン滞在中に、これまで手がけていなかった交響曲の作曲に取り組み、最初の
交響曲(第1番)である、変ホ長調 K.16を作曲した。この交響曲の作曲にあたってはロンドン
滞在中に極めて親しくなった、前述のヨハン・クリスティアン・バッハやカール・フリードリヒ・
アーベルの影響を受けている。
 
★交響曲第1番変ホ長調K.16と第4番二長調K.19及びヘ長調.Anh223/19aの3曲の交響曲は1764年末頃作曲され、
翌年1765年2月21日、ロンドンのヘイマートの小劇場で催された「声楽ならびに器楽の演奏会」で初演された
(K.19とK.19aについては異説あり)。


交響曲第1番変ホ長調K.16 第1楽章 モルト・アレグロ



更にロンドン滞在中の特記事項としては、1765年7月モーツァルトが9歳の時、現存する
モーツァルトの最初教会音楽にして合唱曲でモテット形式の「神はわれらの避け所
”God is our refuge" ト短調 K.20を作曲したことである。

モーツァルト一家は大英博物館を訪問し、、この合唱曲の自筆楽譜を、既に出版されたクラヴィーア・ソナタ集  
(K.6 -K15)と一緒に大英博物館に寄贈したのである。これらは現在でもなお、大英博物館の 
貴重なコレクションを形づくっている。

宗教詩による無伴奏合唱というモテット形式のこの作品は、ヘンデルの合唱曲やイギリスの
宗教マドリガルなど、ロンドンで受けた印象を反映したものとされている。

歌詞は旧約聖書の詩篇第46編の英訳によっている。

★歌詞の大意:神はわれらの避け所であり、また力である。そして悩めるときのまさしく近きにある助けである。


モテット「神はわれらの避け所」God is Our Refuge ト短調 K.20 
構成:ソプラノ、アルト、テノール、バス
London Symphony Orchesta and Choir

画像はW.A.モーツァルト(11歳)とされている肖像画(未公認)



かくしてモーツァルト一家は約1年3ヶ月にわたって滞在した
ロンドンを1765年7月24日に発ち、カンタベリーを経てドーヴァに着き再び
英仏海峡を渡り8月1日にカレー(Calais)に戻り、ここから、フランドル(現在のベルギー)を
経由してオランダに向かうのである。

神童ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、9歳であった。



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kontenten

やはり、ロンドンなんですね・・・
今も師匠(会社の部長)と交響曲第一番の話しから始まって・・・
アシケナージが指揮棒を手に刺した話しとか、ショルティーの演奏会の話しとか・・・
朝から盛り上がらせて頂きました(^^)。
by kontenten (2010-04-01 08:56) 

アマデウス

kontentenさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
良い師匠が会社におられて楽しく仕事が出来ますね☆
アシュケナージのN響の公演中の事件。。。
演奏中に誤ってタクトで反対側の腕を突き刺して出血が止まらず、演奏中に急遽病院に運ばれ、コンマスが弾き振りで演奏を最後まで続行、絶賛を浴びましたね。。。 
by アマデウス (2010-04-01 11:53) 

LittleMy

声楽の分野でも知らないことはたくさんあるのですが、楽器となるともっと顕著なので、本当に勉強になります。
by LittleMy (2010-04-01 12:54) 

nekotaro

ロンドンと言えば、
私の中では60年代ロックの聖地なんですが、
クラシックの聖地と言っても良い場所ですね。
やはり、一度は行ってみたいなぁぁぁ(^^)/
by nekotaro (2010-04-01 15:49) 

バロックが好き

わずか9才でこんな交響曲が作れるなんて
神がかり的ですね^^。
by バロックが好き (2010-04-01 17:27) 

Cecilia

モーツァルトの書簡はおもしろそうなところだけ拾い読みしていましたが、実際に曲を聴きながら他の作曲家の影響を見ていくとおもしろそうですね。
ロンドンに行ったころはまだヘンデルの音楽の全盛期だったのですね。
by Cecilia (2010-04-01 20:06) 

うつマモル

今晩は。この度はご訪問?お悔やみ・CM/ナイス有難うございました。ボランティアをやっているので遅れがちになり、申し訳ありません。素敵な音楽の解説、これからも楽しみにしております。
by うつマモル (2010-04-02 01:01) 

アマデウス

LittleMyさん!こんにちは~☆
いつもご訪問頂き嬉しい、励みになるコメントありがとうございます☆

by アマデウス (2010-04-02 06:49) 

アマデウス

nekotaroさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
60年代のロンドンのロックというと、「ビートルズ」そして「ローリング・ストーンズ」ですよね☆ビートルズの「Abbey Road」で一躍有名になったEMIのAbbey Road StudiosがEMIの経営難より本年2月頃売りに出されたことを思いだしました☆60年代には良い曲が多いですね☆
by アマデウス (2010-04-02 07:01) 

アマデウス

バロックが好きさん!こんにちは~☆
まさに神童ですよね☆
ところがひとたび音楽或いはクラヴィーアを離れるとその年代にふさわしい普通の子供の行動をした様です☆次回はこの様な点を記事にしたいと思っていますので、またお付き合い頂けると嬉しいです☆バロックが好きさんの記事(イタリアン・レストラン)にナイスを入れ様としましたがどうしても入らず、コメントだけとなりました☆ご了承下さい☆

by アマデウス (2010-04-02 07:44) 

アマデウス

Ceciliaさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ご承知の通り、ヘンデルはコロラトゥーラを駆使したアリアを盛り込みながら35曲のオペラを作曲し、カストラート歌手達が思う存分その技量を発揮したわけですが、没後5年を経てもヘンデルの人気は衰えず、モーツァルトも大いに勉強したものと思われます☆
by アマデウス (2010-04-02 07:50) 

アマデウス

うつマモルさん!こんにちは~☆
ご鄭重なコメントありがとうございます!
精力的なボランティア活動に対し敬意を表します☆
こちらこそ、これからも宜しくお願い致します☆
by アマデウス (2010-04-02 07:55) 

モッズパンツ

当時のイギリスは、多くの東インド会社が植民地の拡大を行うなど、もはや日の沈まない国となっておりましたので、ロンドンの都市としての勢いも、他と比べられないほど強大なものであったのではと思います。そういう意味では、著名な音楽家が、ロンドンに活動の場を求めていたというのは、よく分かりますね。w
(^ω^)b

           十 十
           干 牛
       `、 ̄'┴┴┴┴干干 ̄/
~~~~~ ヽ______ノ~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(^ー^)ノシ
by モッズパンツ (2010-04-02 22:23) 

アマデウス

モッズパンツさん!こんにちは~☆
「大AA帝国船舶」でのコメントありがとうございます!^U^
ご指摘の通り、英国では産業革命も始まり、東インド会社も1764年10月にはその軍隊が「ブクサルの戦い(The Battle of Buxar)」で勝利し、ベンガルの地租徴収権を得てインド植民地化の基礎が固まった時代ですよね☆モーツァルトの父レオポルトはその書簡で、この戦いで英国が勝利したこと、又、ロンドンの公園は夜間明るく美しい照明に照らされ、貴族と一般庶民がひとつに結ばれた大都市であること、物価が非常に高いが3時間の演奏会で大金を得ることが出来たことなどを言及しています☆

by アマデウス (2010-04-03 06:02) 

pegasas

モーツアルトの交響曲といえば、39,40,41番ですが、1番も
当然あるわけですが、凄いですね。力強くてモーツアルトの原型がちゃんとありますね。それが9歳ですか。又モテットも良いですね。
厳かな気持ちになりますね。
by pegasas (2010-04-04 12:27) 

rie-klavier

ご訪問&nice!ありがとうございました^^
音楽のことがわかりやすい、素晴らしいブログですね!
また遊びに来させていただきます♪
by rie-klavier (2010-04-04 20:35) 

アマデウス

pegasasさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
大英博物館のモテットの自筆譜を見ると音符はすっきり書かれていますが、英文の歌詞を書き込むのに手間取った様子がうかがえます☆例えば、"God is our refuge and strength"の特に"our refuge"や”strength"が書きにくかった様です☆
by アマデウス (2010-04-05 06:45) 

アマデウス

rie-klavierさん!こんにちは~☆
こちらこそご訪問&コメントありがとうございます!
ベルリンでのピアノの勉強頑張って下さいね☆

by アマデウス (2010-04-05 07:05) 

Esther

オランダ....チューリップ、アマデウスさんもお好きだったんですね〜。

ヘンデルといえば、エステル妃にインスパイアされて作ったというオラトリオ.....。
ヘンデルにアマデウスさんも影響されたのですね〜。

ヘンデルさんの曲、ステキなのがたくさんありますね〜。
サラバンド.....舞曲ですね、大好きです。ソナチネの後ろの方に載ってたの。
by Esther (2010-04-17 07:15) 

アマデウス

Estherさん!こんにちは~☆
コメントありがとうございます!
ヘンデルのサラバンド≪組曲第11番ニ短調HWV.437〔第2集第4番〕から≫については次のURLにアクセスして頂ければスタンリー・キューブリック監督がモーツァルトの時代(18世紀のヨーロッパ)を取り上げた映画「バリーリンドン」(1975年封切り/DVDあり)のBGMの一つとして使用した管弦楽編曲版をお聴き願えます☆尚、この映画にはモーツァルトのオペラ「イドメネオ」K.366から「行進曲」もBGMに使われ、その他同時代の多数の音楽が使われています☆
http://www.youtube.com/watch?v=91sfrw106xs&feature=related
by アマデウス (2010-04-17 12:14) 

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